プロジェクト


Tomo-e Gozen logo

トモエゴゼン計画

トモエゴゼン計画の科学的ゴールは、木曽シュミット望遠鏡用モザイクCMOSカメラを用いた広視野かつ高頻度の観測により、数時間からサブ秒の時間スケールに広がる時間軸天文学のフロンティアを開拓することです。本計画は2014年に東京大学木曽観測所の次世代プロジェクトとして承認されました。 2015年には8台のCMOSイメージセンサーを搭載したプロトタイプ機が完成しました。2016年に84台のセンサーを搭載した実機の開発が始まり、2019年9月に完成しました。現在、広視野かつ高頻度の動画サーベイと高速モニタリング観測が進められています。
Kiso Schmidt telescope

木曽シュミット望遠鏡

口径1.05 mシュミット望遠鏡を保有する東京大学木曽観測所は1974年に長野県木曽郡に設立されました。本施設は東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターにより運用されています。木曽シュミット望遠鏡は直径9度の広視野とF値3.1の明るい光学系を持ちます。望遠鏡と直径16 mのドーム建物の駆動系はトモエゴゼンによる迅速な広域サーベイと追観測に最適化されています。気象監視システムを持つ自律的制御管理ソフトウエアにより自動・遠隔観測が実現されています。
Tomo-e Gozen camera

トモエゴゼンカメラ

木曽シュミット望遠鏡の主焦点に搭載されたトモエゴゼンカメラは世界初の天文用広視野CMOS撮像装置です。84枚のCMOSイメージセンサーは20平方度の空の動画を0.2ミリ秒の絶対時刻精度で取得できます。感度を優先するために単色で観測を行います。カメラ筐体は互いに対称的な構造を持つ4台のユニット(Q1、Q2、Q3、Q4)から構成されます。2フレーム/秒の観測時には30テラバイト/夜のレートで動画データが生成されます。
Tomo-e Gozen camera

CMOSイメージセンサー

84枚の表面照射型CMOSイメージセンサー(19 μm画素サイズ、2,000 x 1,128 画素)がシュミット望遠鏡の焦点面(曲率半径3,300 mmの球面)に沿って配置されています。本センサーは常温でも低い暗電流を達成するため強制冷却装置を用いずに使用されています。また、低い読み出しノイズ(2電子)により、短時間露光の観測時に典型的なCCDセンサーよりも高い感度を達成します。
Tomo-e Gozen server

データ処理

トモエゴゼンカメラには100個のCPUと1ペタバイトの記憶装置を持つサーバー計算機が直結されています。突発現象の検出や追観測用のアラートを発行するために、観測データは先端の情報科学的手法でリアルタイムに処理されます。このような大量のデータを長期間にわたり現場で保持することは難しいため、全ての生データは取得から5日後に記憶装置から削除されます。科学的価値のある情報を含む一部のデータは、生データが削除される前に長期保存用記憶装置に退避されます。
Tomo-e Gozen Emaki

巴御前(ともえごぜん)

巴御前(生没年不詳)は平家物語に登場する木曽地域出身の女性武将で、源平騒乱の時代に木曽義仲(1154 - 1184)に仕えました。 御前は敬称であり英語のLadyに対応します。本科学プロジェクトは木曽地域で戦乱の世を力強く駆け抜けた巴御前にちなみ名付けられました。
巴御前出陣図(部分)、蔀関月、東京国立博物館
Image: TNM Image Archives